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フランス大統領選>投票率が低くてもマクロン候補が逃げ切り<願望まじり?

フランス大統領選を投票率から直前予想する

東洋経済オンライン 4/22(土) 6:00配信

フランス大統領選を投票率から直前予想する

混戦模様の中、わずかにリードするマクロン氏(写真:ロイター/アフロ)

 いよいよ23日日曜日に迫ったフランス大統領選の初回投票。4候補が世論調査の誤差の範囲内でひしめき合う大混戦となっている。誰も過半数を取れなければ上位2人での決選投票になる。どの候補にも決選投票に進出するチャンスがある。

 最新の世論調査では、社会党オランド政権で経済・産業・デジタル担当相を務めた若手・改革派で中道独立候補のエマニュエル・マクロン氏が、選挙戦の最終盤に来て、ややリードを広げている。わずかの差で追う極右政党・国民戦線マリーヌ・ルペン候補の支持層は、「確実に投票する」と回答する割合が多く、票は固そうだ。世論調査で捕捉しきれない“隠れ極右支持者”の存在も指摘され、決選投票への切符を手にする可能性が高い。

 投票直前に相次ぐテロ事件やテロ未遂事件が発生したことは、テロ・治安対策への有権者の期待が大きいルペン候補や、首相や閣僚経験者で保守派の重鎮・共和党フランソワ・フィヨン候補に有利に働きそうだ。2015年に起きた新聞社襲撃テロ事件やパリ同時多発テロ後にルペン候補の支持率が目立って上昇しなかったとの指摘もある。当時は国難に団結して立ち向かう姿勢が好感され、低迷していたオランド大統領の支持が持ち直したが、今回の選挙戦は現職大統領が不在。フランスの主要メディアは大統領選の行方とともにテロ事件を大々的に取り上げており、投票日直前のテロ発生は、やはりルペン候補やフィヨン候補の追い風になると見ておいたほうがよいだろう。

■親EUのマクロン、懐疑派のルペン、メランション

 当初、最有力候補だったフィヨン氏は、勤務実体のない妻や子供に議員スタッフの給与が支払われていたとの金銭スキャンダルが浮上し、3番手に失速したが、決選投票への進出可能な圏内のまま投票日を迎えることになりそうだ。組織票がしっかりしているうえ、高齢者が支持層の中心であるため、インターネットが主流の世論調査が示唆する以上に健闘する可能性はある。また、左翼党のジャン=リュック・メランション候補の勢いもあなどれない。左派有権者社会党離れの加速とテレビ討論会での好パフォーマンスにより、この1カ月で支持率を8%ポイント余りも伸ばしているのだ。

 EU(欧州連合)との関係でみると、4候補のうちマクロン候補が最も親EU的だ。フィヨン候補も基本は親EU派だが、国境管理や対ロシア関係ではEUとやや距離を置く。残りの2候補はEU懐疑派で、メランション候補は特にEUの財政規律に強硬に反対し、ルペン候補はことあるごとにEUに批判的な主張を展開する。両候補ともに、EU改革が実現しない場合、フランスのEU離脱(フレクジット)の是非を問う国民投票を実施する可能性を示唆している。

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今回の大統領選で投票結果を左右するとみられているのが投票率の行方だ。産業構造の変化や都市化の進展に伴い有権者の政治離れが指摘されるのは先進国に共通する現象だが、フランスの大統領選挙の投票率は最近でも80%前後と非常に高い。フランス革命の伝統によるものか、2回投票制による直接選挙で為政者を一本化していく国民参加型の選挙プロセスもあり、フランス国民の間で大統領選挙への関心は高い。

 だが、今回の大統領選では決選投票への進出が有力視される4候補のうち3候補が非主流派政党の出身。有権者の二大政党離れが顕著なうえ、選挙戦の争点も失業、年金、治安、テロ、欧州統合、政治腐敗と多岐に渡り、投票直前となった今も態度を決め兼ねている有権者が多い。世界的な関心を集めているのとは裏腹に、過去の大統領選と比べて投票率が低くなるとの指摘もある。

■低い投票率はルペン、フィヨンの2候補に有利

 投票率の低下は一般に、固定票の多いルペン候補やフィヨン候補に有利に、浮動票の多いマクロン候補やメランション候補に不利になる。決選投票に進出する2候補の組み合わせが、世論調査が示唆するマクロン候補とルペン候補の顔ぶれとなった場合も、決選投票ではマクロン候補がルペン候補を破るとの見方が支配的だ。初回投票で敗退した候補を支持していた有権者票は、穏健中道路線のマクロン支持に流れる割合が圧倒的に高いとみられているためだ。

 だが、初回投票での投票率が低くなると、こうしたシナリオへの不安が広がる恐れがある。この点、やや気懸かりなのは、初回投票が行われる4月23日が復活祭休暇に重なること、決選投票が行われる5月7日が3連休の中日(なかび)であることだ。

 日本では今、「働き方改革」が何かと話題になるが、フランス人が休暇好きなことは読者もご存知だろう。夏の長期休暇(バカンス)以外にも、日本のお盆に相当する秋のトゥーサン休暇、年末のクリスマス休暇、2月の冬休み、春の復活祭(イースター)休暇があり、それぞれ丸々2週間学校が休みになる(土日も含めると17〜18連休に! )。

 フランスでは子供の学校休暇に合わせて家族で休暇を取るのが一般的なようだ。今年の復活祭は4月16日だったが、先週は筆者が勤める日比谷界隈でも外国人観光客がひときわ多かった印象がある。イースター休暇に合わせて日本に旅行に来ていたのではないだろうか。フランスでは全国を3つの地区に分け、この2週間の学校休暇を各地区でずらしている。初回投票が行われる4月23日は3つの地区のうち2地区が学校休暇と重なっており、これもまた投票率の低下につながる可能性がある。

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それでもルペンは勝てない?

 また、決選投票が行われる5月7日は日曜日で、翌日の8日は第二次大戦の戦勝記念日でフランスの祝日だ。4月15〜17日の復活祭の3連休、4月29日〜5月1日のメーデーを挟んだ3連休、5月6〜8日の戦勝記念日を挟んだ3連休と、こう立て続けに連休があると出かける気も失せそうなものだが、フランス人の知り合いによれば、そうでもないらしい。

 なお、イースター休暇も戦勝記念日も毎年のことで、今回の大統領選に限った話ではないとの指摘もあることだろう。ただ、イースターは「春分を過ぎた最初の満月の次の日曜日」なので、毎年日付が変わる。前回大統領選が行なわれた2012年のイースターは4月8日で、初回投票が行なわれた4月21・22日と重なっていなかった。また、第二次大戦の戦勝記念日は毎年5月8日で今年は月曜日で3連休となるが、2012年は火曜日で連休ではなかった。

 フランスにも不在者投票制度があり、積極的な投票意思のある有権者は事前投票を済ませていることは言うまでもない。とは言え、これだけ接戦となると、昨年6月の英国の国民投票がそうだったように、当日の天候や日並びが投票結果に微妙な影響を与える可能性も否定できない。

投票率が低くてもマクロン候補が逃げ切り

 投票率が下がった場合も、ルペン候補がマクロン候補を破るのは、かなりのナローパスであると言える。決選投票の組み合わせが両候補となった場合のすべての世論調査が、マクロン候補が50%台後半から60%台前半の支持率で勝利することを示唆している。投票率の低下が投票結果をどの程度左右するかを具体的な数値例でみてみよう。

 決選投票でのマクロン候補の支持率を60%、ルペン候補の支持率を40%と仮定し、固定票の多いルペン候補の支持者の投票率が高めに、浮動票の多いマクロン候補の投票率が低めに出るケースを考えてみる。例えば、ルペン支持者の投票率が過去の全国平均を上回る90%に達すると仮定した場合、ルペン票がマクロン票を上回るためには、マクロン支持者の投票率が60%未満にならなければならない。ルペン大統領の誕生を阻止しようとの戦略的な投票が予想されることからも、ルペン候補の勝利には様々なリスク事象が重なる必要がありそうだ。

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田中 理

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最終更新:4/22(土) 6:00

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https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170422-00168833-toyo-bus_all&p=3